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たかが10分、されど10分

映画『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス

 

10ミニッツ・オールダーは、15人の監督が10分間で“時間”をテーマに撮影・制作したコンピレーションフィルム。

 

チェコ映画について調べていたときにたまたま見つけた。10分だから難解で地味な映像であったとしても気兼ねなく見れるし、「時間」というテーマも面白い。なによりジム・ジャームッシュアキ・カウリスマキが参加しているということが見なくてはならぬという意欲をかき立てた。

 

ツタヤに行ってみるとDVDパッケージが思いもよらず派手だった。

ビビットなピンク地の表紙の裏には「映画至上空前絶後!超巨匠監督15人による比類無き、究極のコンピレーション・ムービー!」とある。10何年前の若手お笑いライブの広告みたいにやたらテンションが高くて、映画界のバブル?的な空気を感じた。

 

そして早速カウリスマキジャームッシュが収録されている「RED」版を見た。

 

REDには7人の監督による7本の作品が収録されている。これには「人生のメビウス

(The Trumpet)という副題が付いている。

トランペットが邦題で人生のメビウスとなるのは何故だ?メビウスって人の名前?ウルトラマン

見終えた感想は、たったの10分、されど10分。

10分という時間でこれだけのことが表現できるのか・・!

 

特に印象に残った三作品

 

アキ・カウリスマキ「結婚は10分で決める」

 

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マルック・ペルトラという俳優は、『かもめ食堂』に出てくる。私にとって彼はカウリスマキの『過去のない男』よりも『かもめ食堂』にでてくるおじさんなのだ。

かもめ食堂』ではお茶目な顔を見せた彼であるが、カウリスマキの作品となると無表情を極める。カウリスマキ監督は彼に演技について「左眉だけなら動かしてもいい」と指導したらしい。「結婚」という人生の節目に立ちながらもはや左眉さえもビクともしない中年男女。向かうはシベリアフィンランドから?こないだヘルシンキに行ったけど、カウリスマキみたいな不穏な空気があの頃あったのだろうか。色合いがビビットで時計が可愛らしい。そしてここから『過去のない男』に続く?らしい。見たい。

 

ビクトル・エリセライフライン

 

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この作品が一番すごいと思った。たったの10分に現在・過去・未来・生・死・日常…全てが詰め込まれていた。ラストのナチス国境閉鎖の新聞記事に水が滲むカットは、未来への不穏を予感させる余韻を残してる。

現在・過去・未来・生・死・日常を表すイメージがリズミカルに映し出され、常に目を奪われていた。すやすやと眠る赤ん坊に滲む真っ赤(モノクロだけど鮮明)な血、滲んでいくのと並行して描かれるそれぞれの日常、幸せな家族写真、戦争の影…

ライフライン」は赤ん坊の生死の境界線であると同時に、人間の絶え間なく繰り返される日常という時間の流れといった横の大きな軸をも感じさせる。

すごいな、されど10分。

 

ジム・ジャームッシュ「女優の休憩時間」

 

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これは女優の10分間の休憩時間をただ描いたもの。特に何が起こるわけでもない。

彼女はラジカセでCDを流し、タバコに火をつけ、ただ友達と電話をしている。たったの10分の休憩中であるにもかかわらず、入れ替わりでせわしなくやってくるスタッフに、彼女は呆れるでもなくただ指示に従う。何かもう、全てに無関心で上の空といった感じだ。明らかに「休憩」できていない状況に対して彼女はひとかけらの抵抗心も持たないのだろうか。

従順なようでいてそうでもない。彼女の人間味は実はたくさん映し出されている。「脱がないでね」と言われたそばから靴を脱いだり、運ばれてきた食事のプレートにタバコを押し付けたり。彼女が女優としてこの先どのような人生を歩んでいくのか、未来を想像してしまうような広がりを見せる10分だった。

 

 

それから、作品と作品をつなぐときに流れるトランペットの音も良い

川の流れが毎回映し出されるのもとてもいい。水が流れていく様子は時間の流れを連想させる。川は人生だ。

 

とても贅沢な作品だと思う。