好きな音楽がある限り、好きな小説がある限り、好きな人がいる限り、ゾンビの血を吸ってまで生きる意味があるのだろう。

“Only Lovers Left Alive”
「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ」
/ジム・ジャームッシュ

 

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長く生きれば生きるほど、人は孤独を知るのだろう。何世紀もの時を生きてきた彼らからただようじっとりとした寂しさが、ポーティスヘッドの音楽のように終始空気を包み込む。
アダムとイヴ(なんてストレートな名前)が映画の中で見せる、音楽や小説を愛でる仕草がとても丁寧で彼らの情熱がオフビートにじっとり描かれる。
彼らが劇中しきりに「ゾンビ」と呼んで忌み嫌うのは単に「人間」を指すのではなく、そういう文化をろくに鑑賞せずただフラフラと生きてる人たちのことを言うのだろう。彼らはゾンビに属さない「人間」が作った楽器や本をこよなく愛している。何百年も生きてきた彼らにとって、「生きる」ことは並大抵のことじゃなく、その長い間に色んな意味を継ぎ足し、血を飲み続けるのだろう。それが本作では文化的な歴史、これまで積み重ねられてきたアーカイブへのリスペクトといったものに意味づけられている。ラストショットは少しコミカルだけど、ものすごい生命力に溢れている。息を吸って吐いているだけのお前ら、もがいて逃げる情熱を見せてくれ!飲まれるな、生きろ!!奮い立たせられる。
実はそれってジム・ジャームッシュの映画にいつも表れる一貫したテーマでもあって、例えヴァンパイアものでも彼の映画であることに変わりないというのが本当に良くて好きになっちゃうんだ。真上から捉えるショット、チラつく日本の影、彼の好きなものを詰め込んだみたいな作風がこんなに素敵に見えるのはジム・ジャームッシュだからこそなんだろう。かっこいいね、永遠にかっこいい。

 

 

これをきくとこの映画を思い出す曲。劇中で流れてたと勘違いしたほどにこの映画の雰囲気に合ってて好きな曲。

 

Glory Box / ポーティスヘッド
https://itunes.apple.com/jp/album/glory-box/id14716026?i=14716060

 

ちなみにライブ版でタバコ吸いながら歌う姿がかっこよすぎて死にそうということも書き加えておこう。

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https://youtu.be/C3LK5ELvZwI